みなさん、今日も一日、お疲れさまです。

「耐え難きを、耐え、忍び難きを、忍び」
君は、どのくらい彷徨った？笑いのない公園、
十字路に呆然としている倒れかけた電信柱、
瓦礫の山の上に生き残った人がみんなが聴ける
ようにと持ってきたラジオ、それらをじっと
体が動くのを忘れたようなひと、ひと、ひと。

君は、どう聴いた？どう思った？わだつみの
もとに旅立った少年達、男達が戦っている時
家を必死で守った母達、嫁達、娘達、幼児達
祈るしかすべもなくくやしさを噛み締めた
老人達、日本のすべての人が立ち尽くした
のを、君はどう解釈した？

君は、当時の日本政府、アメリカ政府、国を
任された人々に直接会った？君は運命じゃない
。君は、定めじゃない。君は風。君は雲。

君の見たことを今、探し、知り、１００年後
の子孫たちに伝えようとしてがんばってる人が
いるんだ。忍び難いことを忍ばせたのは、誰？
耐え難いことを耐えさせたのは、誰？君は知らない
かい？もしかして僕達人間？

どんな形でも良い。教えてほしいんだ。何故だった
のか。知らなくていい事？そうかもしれない。
君には、人間をゆるす力があるんだね。君には
人間を奮い立たせ、希望の光を見せる力があるんだね。

あの日のままの君を感じる時、人間が、もっと言う
なら人間というこの星の１命がとんでもないことを
しでかしたことを君は黙って時間と協力しもとどうり
に近い状態にしてくれた。もちろん、未だに苦しんでる
人々のことは知っていると思う。山や海も。土も。水も。

でも、次から次に生まれてくる人間のために、君は
星の力をフル活用して今の僕達の生活のための用意
をしてくれた。ありがとう。君。

君といると人間が何をすべきか、はっきりわかるよ。
僕達にできること、恋、愛。それは、人を目覚めさせる
力。濁ること、淀むこと、ねじ曲がることも
ある。
君といるとそのことに気をつけられる。まったく
ごめんな、僕達は本当に弱くどうしようもない生き物
なんだ。

だから、君、絶対この星からはなれないで。
耐え難い状況にしたのは誰でもない僕達人間だったんだね。
君を見失い、君のことを蔑ろにした僕達人間だったんだね。
だから、君、僕が死ぬとき、君の一部にぼくもいれて。

君は言葉をもたないから当然答えてくれるはずもないけど
今日、僕の部屋の植物たちは元気がいいんだ。天気も
よかったよ、空なんて底抜けに青だった。

僕が一部になったら必ず、人間がもっている愛情の
ことを教えるよ。

もう二度とラジオの前ですべてのことに下を向かなくて
いいように。もう二度と恋しく愛しい人を心で握りしめ
自分を偽って生きなくていいように、もう二度と君を
見失い、君を無視して欲望の力に支配されないように。

１９４５年８月１５日、終戦の日、失われたすべて
の命に謹んで御冥福をお祈りいたします。

２００７年８月１５日
みなさんの明日が良い一日でありますように



　　　　　　　　　中川謙太郎